反論の具体的方法

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「反論」をテーマにいくつか記事を書いてきましたが、これを最後の記事にしたいと思います。

最後は、より具体的なテクニックについて。

目的は、「相手の主張に飲み込まれないこと」です。

声の大きい人、自己中心的な人、人を軽んじる人、そういう人に負けない「反論の戦術」。

戦いは、本来「戦わずして勝つことが第一」だと、孫子は言っています。

つまり、相手の考えを先に読み取って、相手が仕掛けてくる前にその謀略を断つのが一番良い方法です。そうすれば、こちらにも相手にも実質的な被害がありません。

しかし、いつもそういう時ばかりではありません。地震が何の前触れもなく突然起こるように、予想外の出来事はいつでも起こります。

そんな時の防災グッズとしての「反論の技術」です。

この本は、言葉で戦うことが仕事である弁護士さんが書いたものです。

しかし、内容は難しくなく、若い人向けに書かれたもので、あえて易しい表現を使って書かれています。

そのため、具体例として物足りなさがあるかもしれません。

それでも、実際に使うにあたっては取り入れやすいです。

たとえば、相手の話に対して「質問する」。これも反論の技術の1つです。

技術その1「質問する」

古代ギリシャの哲学者「ソクラテス」はいつも議論に勝っていました。

その方法は、相手の意見を聞き出し、それに質問を投げ続けることで相手の矛盾をあぶり出す、というものです。

これは『ソクラテス式問答法』と呼ばれています。

「はい論破」言ってみたい人の、ソクラテス式問答法

欧米で議論の文化が成熟しているのは、こうした歴史があったからです。古代に弁論術が生まれ、「どう話すか」の学問『修辞学』は、ヨーロッパでは中世まで教養の中心にありました。

議論において、わからないことに質問をせず、知ったかぶりをするのは自分を不利にします。

なぜなら、自分が気づかないうちに、話が相手の有利な展開に進んでしまうからです。

だから、「私はよくわからないから教えてくれ」といった姿勢でもって質問していく方が良いのです。

専門用語が出てきた場合など、質問をすることで言葉の意味を把握することができます。難しい言葉は相手もあまり理解しないで使っている場合があるので、ちゃんと確認を取っていくことで、自分と相手に認識の違いが生じないで済みます。

質問をしたその答えによって、相手がどれくらい詳しいのかを把握することができますし、相手が話しているうちにボロが出れば、その矛盾を突っ込むこともできます。

矛盾を突くことができれば、相手から言葉の勢いを奪うことができ、こちらの有利な展開に持ち込むことができます。

一方、自分が何かを意見するときには、矛盾が出ないように、しっかり準備しておくことが必要です。

しかし時には相手から意地悪な質問を受けることもあるかもしれません。

そのような時には「回答しない」ことが1つの手です。

回答しない

私たちは、素直に生きることが良いことだと教えられて育てられてきました。ですから相手の言うことにはなんでも素直に返事をしたほうが良いと思っています。

しかし、人の良さにつけこんで、相手の情報を引き出して自分が有利に立とうとする人がいます。

私の身近にもいましたし、オレオレ詐欺はその典型ですね。毎年何百億もの被害が出ています。

質問は、必ずしも素直に回答しなければならないものではありません。「黙っていてもいい」権利を私たちは持っているし、話題を変えても問題ありません。

ただし、やりすぎると相手の温度をますますあげることになりかねないので注意が必要です。

もちろん、相手は怒鳴っているうちに疲れてくるので、それを待つ作戦もありっちゃありです。

しかし、悪意のある質問に回答しないならまだしも、回答しないことでますます信用を失うような場合もあります。

たとえば、会社に不祥事があった場合、責任者はいつまでも黙っているワケにはいきません。会社の信用に関わるからです。何らかの形で答えを出さなければなりません。

そこで、回答はその場ではすぐには出しません。将棋で、勝敗に大きく関わる局面では持ち時間を十分に使って、慎重に次の一手を選びます。質問に回答するのもそれと同じです。

うかつに答えてしまうと、それが「言質(げんち)」となって自分の意見になってしまいます。相手に恫喝されると焦って「はい、そうです」と言ってしまいますが、それがあなたの意見になってしまうのです。

ニュースでは、不祥事の疑惑がある会社の社長が「詳細を確認していないので今は回答できない」というコメントをすることがありますが、これは何もまずいことではありません。

私たちはそういったニュースを見て「あいつ、やましいことがあるから話さないんだぜ」と思いますが、うかつな回答をするよりはずっと良いのです。

とくに感情的になっているときに回答することは、悪い結果を招くことが多いです。

相手が怒っている、自分が焦っている。そのような状態ではその場しのぎの答えをしてしまったり、相手を何とか言い負かそうとばかり考えてしまいます。

だから、感情的になっている時は、なるべく回答しない方が良いです。時間を置いて冷静になれば、周りのことが見えてきて、どう答えるべきかがわかってきます。

相手を褒める

反論と言っても、コミュニケーションの一つです。何でもかんでも反対するのでは成り立ちません。

相手の意見に反対するうちにカッときて人格まで否定する人がいますが、どんな場面でも人格否定はNGです。

相手の意見には反対するが、相手の人格までは否定してはいけない。この線引きが難しいのですが、相手の意見をほめるとうまくいきます。一回肯定することです。

ポイントは、相手の意見の「内容」をほめるのではなく「熱意」をほめます。

そうすることで相手の意見に理解を示しつつ、しかしどうしても受け入れられないワケがあるという姿勢を示すことができます。

「一般論としては正しいが、具体論としては間違っている」、という姿勢を打ち出します。

たとえば、「世界から武器がなくなったら良い」という意見は一般論としては正しいです。

しかし、今すぐにそうはできない。

なぜなら、武力を持っていれば、他国が悪いことを考えて攻撃してこようとしても、「あいつも武器を持っているからな」と躊躇します。そうして平和がなんとか保たれている現状があるからです。

こうした、「一般論としては賛成だが具体論としては反対」のことを「総論賛成、各論反対」といいます。

また、似たような考え方に「必要性と許容性」というものがあります。

そうする「必要性」はあるけど、「許容性がない」という理由で相手の意見に反対する方法です。

たとえば、最新のスマホが出たとします。今のスマホは5年も使っていて電池の消耗が早いし液晶も割れている。買い換える「必要性」があります。

しかし、お金がない。「許容性」がない。

だから今買い換えるワケにはいかない。

と、このように論理を展開することができます。

この方法は、相手の意見に真っ向から反対するわけではないので、相手のメンツを保ちつつ、自分の意見を通すことができます。

相手の意見にちゃんと耳をかたむけ、「確かにそうだよね。でも…」と流すこのやり方。これはビジネスの場では『イエス・バット法』と呼ばれます。

たとえば、営業マンが商品の説明をしているときに、お客さんから「でも、あの商品のほうが性能が良いよ。」といった反応があったとします。

そのとき営業マンは「おっしゃる通り、あちらの商品は性能がとても良いです(イエス)。でも(バット)、一般家庭で使うのにあそこまでの性能は必要ありませんよ。」などと、相手の意見を肯定しながら自分の意見を主張する方法です。

呼び名は様々ですが、やっていることは同じです。法廷の場でも、ビジネスの場でも使われている方法だから、それだけ効果があると言えます。

争点を決める

「今、何の話をしているのか」これを『争点』といいます。

ほとんどの場合、相手に反論をしなければならない状況というのは、いろいろな要素が絡み合ってできるものです。小さなことが積み重なりこんがらがって、問題になっています。

だから、問題について話し合うと、様々な意見が出てきます。

そこで、こちらで「つまり何が問題なのか」を設定してしまいます。はなしをまとめるということです。まとめ方は、できるだけ自分の有利になるようなものにします。

そんなのできるのか、と思われるが、できます。

たとえば、「マイナンバー法」。導入までには紆余曲折がありました。

政府は「いかに効率的に管理するか」を争点としてマイナンバーの導入を推し進めました。「マイナンバーを導入するととても便利になるよ」と。

しかし、導入に反対する人たちは「人権」を争点としました。

すると、マイナンバーは「国民総背番号法案」という非人道的な法律ということになります。

争点をどう設定するかによって、同じ問題なのにまるで違う問題かのように扱われます。

以下の記事でも書きましが、意見というのは科学のように唯一の答えが導き出せるものではありません。どちらが「より納得できるか」によってその正しさが判断されるものです。

言い返す方法。決めろ!言葉のカウンターパンチ

だから、争点を決めることが必要なのです。

おわりに

相手の意見に反論ができたら、次は自分の意見を主張しなければなりません。

自分の意見に説得力を持たせるには、「論理」「感情」「人格」の3点が必要であるというのが、大昔からの原則です。

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